資金調達

初めての銀行融資(医院開業編)

はじめに

医院の開業_医業経営
開業しようとする貴方にとって、銀行から事業資金の融資を受けることは人生において初めての経験だと思います。
かく言う私自身も税理士事務所の開業にあたって事業資金の借入を経験するまでは、銀行融資に関する知識は無知に等しい状態でした。

その後、自分自身の銀行借入の経験や院長との銀行融資の立会を50件以上経験する中で、銀行借入に関する一定の法則性や金融機関独自の融資に対する考え方が分かってきたように思います。ここで述べる事は全て私の経験に基づいたものです。

もしかすると若干の独断や偏見が入っているかもしれません。
ただ、大まかな考え方は当っているはずです。このレポートを参考にして融資交渉を有利に進めてみてください。

私の今までの経験が貴方の医院開業に少しでもお役に立てれば幸いです。

銀行の思考回路

はじめに金融機関は、新規開業者には非常に厳しいということを知っておく必要があります。

例えば「専門医の資格を持っている」、「過去○○件の手術実績がある」など医療人として華やかな実績をアピールしたとしても、銀行が「分かりました、当行に是非融資をさせてください!!」と気持ちよく返事をしてくれる金融機関はほとんど無いでしょう。

ただし実際のところ、当事務所のお客様は全員が金融機関の融資を受けて開業という夢を実現させています。

それは何故でしょう?
当然そこにはコツがあります。

ここでは金融機関の思考回路について述べていきます。

貸金の保全可能性

医院開業_医業経営
私の経験上、金融機関は

貸金の保全可能性

②事業計画の緻密さや過去の診療実績

③院長の人柄の順番で融資

の判断をしているように思います。
この中で最も大きなウエイトを占めるのは貸金の保全可能性です。
いやむしろ、それが全てだと言っても過言ではないでしょう。院長の人柄や過去の診療実績は、実際のところ二の次、つまり参考程度なのです。

結構意外でしょ?
貸金の保全可能性について簡単に言うと「貸金が全額回収できる可能性」という事です。
支店の銀行員は融資額についても莫大なノルマを抱えています。本音としてはノルマを消化するために、できるだけ融資はしたいのです。しかし、実際のところ融資を実行するかどうかを決定するのは銀行の本部の審査担当者です。

つまり本部の審査担当者が首を縦に振らない限り一生懸命融資の稟議書を書いてもその努力は無駄になるのです。
「院長はとても誠実で頑張り屋です!」と審査担当者に伝えても、それはあくまでも感覚値に過ぎません。

そこで、過去実績のないドクターに融資してもらえるのかを決めるのは、やはり貸金の保全可能性なのです。

つまり、担保はあるか、連帯保証人は立てられるか、連帯保証人がいる場合はその保証人に保証能力はあるかどうかという事です。こんな事を言うと「銀行は血も涙もない」と思われそうですが、銀行だって預金者から大切なお金を預り、それを原資に融資している訳ですからいい加減な融資はできません。

むしろ当り前だと思ってください。

連帯保証人

連帯保証人_医業経営
クリニック開業で当事務所にご相談に来られる場合、ほとんどの方は「親や兄弟に迷惑はかけられないから連帯保証人は立てたくない」と言われます。

院長が担保を提供できる場合はそれでいいのですが、院長に担保が無い場合、連帯保証人は十中八九立てる事になるので覚悟しておいた方がいいでしょう。家族を保証人に立てたくないという気持ちは十分理解できますが、もう一歩院長の考えを進めて「家族を連帯保証人に立てるのはしょうが無い。それよりも早く事業を軌道に乗せて、一日でも早く保証人を外して家族を安心させるんだ」という気持ちに切り換えた方が良いように思います。

かくいう私も75歳の年金暮らしの父親を連帯保証人に立ててその後、親の連帯保証を抜くのに2年かかりました。
銀行は甘くないんです。事業計画の緻密さや過去の診療実績融資可能性の大半が「貸金の保全可能性」で判断されますが、全ての方が十分な担保を提供したり、保証能力の高い連帯保証人を立てられるとは限りません。

そこで次に、事業計画の緻密さや過去の実績をチェックされます。事業計画は税理士と一緒に作り、銀行へ同行してもらえればほとんどの場合は大丈夫でしょう。

先ほど言いましたように、面接をしている銀行員は、直接融資してくれるわけではありません。
その銀行員が融資に関する稟議書を作成し、支店長や本部に決済をもらうのです。ですから銀行員はドクターや税理士の話を聞きながら「どうやって本部の審査担当者にプレゼンしたらいいだろうか?」と考えています。

そこで、目の前の融資担当者が、後日上司や本部に説明しやすいように資料を作って「こんな感じで本部の人にプレゼンしてくださいね」という気持ちを込めて話を進めて いきます。

過去の診療実績

ここでは過去の診療実績について述べていきたいと思います。

過去の診療実績とは、院長の医療人としての力量やクリニック開業に関しての真剣度をどのくらい客観的に証明できるかという事です。
例えば医院開業に向けて数年前から給料の一部を定期預金で積み立てていたり、医院開業直前近隣の病院で既に働いていた実績がある場合はかなり好印象となります。

また、住宅ローンがほぼ完済されているなども、住宅に資産価値が発生すると同時に、院長の金銭感覚が健全とみなされ好印象となります。

院長このようなプラス項目がある場合は積極的にアピールしましょう。

院長の人柄

院長の人柄_医業経営
皆さんは院長の人柄が一番大事だと考えられているかもしれませんね。
銀行とは長い付き合いをするわけですから、院長との関係を良好に保ちたいとは思っています。院長の人柄が良いのはプラス項目に違いありませんが、何せ新規開業に対する融資はリスクが高いですし、銀行の本部にプレゼンしてもらう際、「とても熱心で誠実な方でした」と言ってもらったとこで、貸金の保全可能性は何も変わりませんから、大きなウエイトは占めないように思います。

むしろ、数年後に医院経営が軌道に乗り、新たな資金需要が発生した時に、院長の人柄が重視されるように思います。

金融機関ごとの特徴

融資の審査は非常に厳しく小口の融資には消極的です。

銀行側から見た場合、融資にかかる手間は100万円であろうが100億円であろうがあまり変わらないようです。
できるだけ確実な相手先に多額の融資をしたほうが効率が良い訳ですから、効率が悪い数千万円程度の融資やハイリスクな新規開業には融資したくないというのが本音だと思います。
都市銀行が行わないような融資案件を取り扱っていると考えていいでしょう。

プロパー融資(保証協会なし)での融資は貸金の保全性が高ければ可能ですが、信用保証協会付であればかなり高い確率で融資してくれます。
融資の難易度は高い順から、第一地銀 → 第二地銀 → 信用金庫等となります。
日本政策金融公庫は民間金融機関の融資を受けにくい、新規開業案件や中小零細企業への少額の融資(イメージでは1,000万円前後)を行う政府系の金融機関です。

過去の経験上ドクターであれば1,000万円程度の額は比較的簡単に融資してもらえます。
直接の融資は行いませんが、信用力の低い会社が銀行融資を申し込む際、保証料を支払う事によりその会社の保証人になってくれる公的機関です。

一見、保証料さえ払えば保証人になってくれるように感じますが、たとえ保証料を払ったとしても回収可能性の低い会社には保証してはくれません。

融資交渉の進め方

融資交渉_医業経営
①税理士に相談

まずは銀行融資に強い税理士を探して相談して下さい。私は開業時における税理士の仕事の80%は、融資を成功させることだと考えています。私でなくても税理士は一般的に融資立会の経験が豊富で、融資の勘どころが分かっている人が多いです。銀行との融資交渉を上手にコントロールしてくれるはずです。

②知り合いの銀行員がいないか知人に尋ねる

融資交渉を税理士任せにするのではなく、できれば既に開業している先輩ドクターを介して銀行員を紹介してもらいましょう。銀行員は初対面の人に対して警戒心が強い傾向にあります。できれば先輩ドクターに頼みこみ、複数の銀行を紹介してもらいましょう。先輩ドクターを通じて会う場合、銀行員はその先輩ドクターの延長線上のイメージで貴方の事を見てくれています。

③事業計画の作成

税理士と相談しながら事業計画を作成します。

④銀行にアポイントを入れる

アポなしでの訪問は極力避けた方がよいでしょう。銀行員は日々莫大なノルマを抱えて動いています。アポなしで銀行を訪問した場合、銀行員の本音は「ただでさえ忙しいのに面倒な人が来たな」と考えていると思ったほうがいいでしょう。

⑤銀行に相談に行く

複数の銀行に相談します。
「複数の銀行に申し込んだのがバレるとまずいんじゃないでしょうか?」との質問をドクターからよく受けますが、銀行員は複数の銀行に融資の相談に行くのは、或る程度想定していますので気にする必要はありません。

「他行にも相談されましたか?」と聞かれる事がありますが、「はい」と正直に話していいでしょう。
また、融資してくれるかどうかについて銀行がその日に回答してくれる可能性は皆無です。

理由としては、貴方が相談した銀行員が直接決済権を持っている訳ではなく、融資の書類を作成して銀行の本部に審査をしてもらいます。よって通常は回答に1ヶ月ほどの時間がかかる事になります。

「え!1ヶ月もかかるんですか?その間医院の開業準備はどうすればいいんでしょう?」との質問をよく受けますが、銀行訪問に同席してもらった税理士に感想を聞き、医院の開業準備を進めるべきかどうかアドバイスをもらいましょう。
通常は相談の際、銀行員に「この事業についてどう思われますか?(融資はおりると思いますか?)」と感想を尋ねて融資してくれる可能性がどの位高いかを探ります。

融資可能性が全くない場合はこの段階で分かりますので、あまり心配しなくてもいいでしょう。

資金調達のQ&A

医院経営を通じて地域社会に貢献したい!クリニックを開業して成功したい!

今皆さんは将来の夢に向かって決意を固めておられる事と思います。
今から開業するまでの数カ月間、様々な苦労があると思いますが、その中でも銀行融資は皆さんに訪れる最初のヤマだと言っても過言ではないでしょう。

このレポートを参考にして是非金融機関からの融資を勝ち取ってください。
メディカルサポート税理士法人|メールでのご相談
メディカルサポート税理士法人