医院開業向けサポート

決して本には書かれていない医院開業ノウハウ


~メディカルサポート税理士法人~
鶴田幸之税理士事務所_医院開業ノウハウ
我々はあくまでも会計事務所であり、ドクターの税務相談業務、記帳代行、税務申告業務を行う事がメイン業務になります。

しかし、我々が過去30件以上の医院開業に立ち会った際、「これはいいな!」、「もっとこうすればよかったのではないか?」などと思う事も数多くあり、これから述べる事はそれらの気付いた点を記したものです。

読んでいて分かりづらいことや、ちょっと違うんじゃないか?と思う点もあるかもしれませんが、以下の文章は、あくまでも過去の経験に基づいた「私見」である事をご了承ください。

我々の医院開業お手伝いの経験が、院長院長の開業成功にほんの少しでもお役に立てれば幸いに思っております。

患者さんの獲得活動について

開業にあたって、院長院長が最も気になるのは「果たして患者さんが来てくれるだろうか?」という事に尽きると思います。

はじめに

鶴田幸之税理士事務所_医院開業_サポート
本当にあった話です。
その院長院長(以下、甲院長 診療科目は循環器科)は「お金をかけないクリニック開業」をコンセプトに開業準備を進めました。

医院の開業場所は団地の入り口の以前は本屋さんだったところで、家賃はなんと月額8万円!
従業員はパート2名、余分な医療機器の設備投資は一切行わず、総投資額は800万円と、他の医院と比べるとかなり少額です。

診療日は月~金で土日は休み。
名刺やチラシは全て甲院長の手作り、ポスティングは業者任せ、
近隣の挨拶は一度したきり、HPは作りませんでした。


鶴田幸之税理士事務所_医院開業
医院開業前のやり取りで、
「院長、循環器クリニックっていう看板が、一般の人には分かりづらいように思うんですが・・・」
「いやいや、自分は循環器の疾患だけを診ていきたいから、これでいいんです!!」
「院長、土曜日は診療した方がいいんじゃないでしょうか?」
「いやいや、子供と遊べるのもあと数年ですから、土日は子供と過ごしたいんです!!だから土曜日は休診にします!!」

「院長、大丈夫だろうか?」と何となく胸騒ぎがします・・・

そしてその結果、開業後の来院患者数は1日あたり0~3名程度・・・
患者さんが少ないので、開業2ヶ月目にパートの准看護師1名を解雇。
開業1年後にもう1名の医療事務員を解雇。結果、甲院長一人となってしまいました。
そして当事務所との顧問契約も解約。

税理士事務所_医院開業
最後にお会いした時に、
「本当はすぐにでも医院を閉鎖したいけど、この店舗は大家さんと5年契約で借りてるから勝手にやめれないし・・・誰か医院を買い取ってくれないだろうか・・・」
とぼやいておられました。

「甲院長の何がいけなかったのだろうか?何か自分にできることはなかったのでろうか?」
私にとって、このようなケースは経験した事がなかったので、正直なところショックでした。

実は、甲院長は温和で人当たりの良い方です。むしろ人に好かれるタイプの方です。

しかしよく観察してみると、近隣に競合医院がひしめいています。
多分医院を開業した場所は「家賃が8万円で安いから」という単純な理由で決めたように感じました。
近隣の商店や有力者への挨拶は一度きり、ポスティングは業者任せ、内覧会も行わず、医院の開業挨拶状も送らずじまいでした。

甲院長は良い人なのですが、普段の会話の中で、人の意見を聞きたがらない頑固な性格がちょっと気になっていました。

今考えると「お金をかけない開業」というコンセプトそのものが、「うまくいかなかったらすぐ辞める」という、当初から逃げ腰であったようにも感じます。

甲院長は、他の成功している院長と比べると「どんなことがあっても成功するゾ!!」という真剣味が足りなかったように思います。

税理士_開業
はじめから、厳しい話をしてしまいました。
「クリニック開業には何が有効なのか?」、「ベストなクリニック開業準備は何なのか?」
正直なところ難しいのが本音ですが、以下の話を参考にしてみてください。

「商売っ気が強すぎないか?」、「近隣で開業している医師が見たらどう思うだろうか?」
という感想を持つドクターもいらっしゃいますが、院長は何千万円もの借金を背負って開業するんですよね?絶対クリニックの開業を成功させたいんですよね?

医院を経営して家族やスタッフさんを養っていくんですよね?
だったら他人の目なんて、あまり気にしなくていいんじゃないでしょうか?

広告について

「鶴田さん、さっき広告代理店の人が病院に来まして、今だったら駅の看板が特別価格の年間50万円で出せるそうなんですが、どう思います?」これは開業される院長から、よくされる質問の一つです。

そのような場合、「確かに50万円は安いですね。しかし院長、看板を作る前にまず①誰に②何を売るかというコンセプト作りをするのが先ですよ。

院長は①誰に②どのような医療を提供したいと思っているんですか?」
と質問を投げ返しております(質問に対して質問で返して恐縮ですが・・・)。

つまり、「電話帳に掲載しようか?」「駅前に看板を出そうか?」と考える前に、
①誰に対して②どのような医療を提供するのか
という医院のコンセプトを明確にしてください。例えば「老人に対して訪問診療を行う」などです。

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そうすると、どのような媒体にどのような文面で広告を出せばいいのかが、おぼろげながら見えてきますよね。

また、医院のコンセプトは一つではないはずです。「老人に対しては・・・」、「中年女性に対しては・・・」「小児に対しては・・・」などなど。

コンセプト作りは、銀行融資を受ける際の銀行の説得材料となりますので、院長の得意分野を絡めながら、是非ゆっくり考えてみてください。

また広告媒体には、それぞれに一長一短があると思います。

以下、私見ですが私の考えを述べさせていただきます。

精神科・婦人科・泌尿器科などの人に相談しづらい病気を診療科とする医院や、産婦人科の医院についてHPは特に有効のようです。

ある心療内科では患者さんの半分以上がHPで来られているそうです。
有料(20万円程度)のスポンサーサイトに広告を載せても元は十分取れると聞いた事があります。その他の診療科での効果は、はっきりとは分かりませんが、現在HPはあって当然であり、逆に無い場合はマイナスになるような気がします。
よくご老人の家に近隣の医療MAPが貼ってありますよね。
地図の周りに「○○医院」、「××クリニック」等がたくさん載っているやつです。これは掲載料が安いにも関わらず、かなり有効のようです。

是非業者さんを探して問合せをしてみてください。
掲載申し込みをしても、次の電話帳発行までは掲載されませんので注意が必要です。
また、老人を対象とした診療科である場合や、医院が地方(つまり都心部ではない)である場合には一定の効果があるようです。
経験上、実際に掲載を検討した場合、広告枠の大小が医院の印象を決めるような気がしてきて、つい大きく出したくなります。

電話帳広告は大きく出すと、掲載料が高額になりがちなのが悩ましいところです。
また、※電話帳広告詐欺も頻繁に発生しているので、掲載料支払の際には注意が必要です。

 ※「㈱日本電信電話」など一見NTTであるかのように見せかけた振込票が、電話帳掲載後に送られてくる事があります(ちなみに当事務所のお客様で2件ありました)。

医院看板についてはどのくらい効果があるのか、よく分からないのが正直なところです。
診療圏を広めに考えている場合は遠くでも看板を立てる事になるでしょうし、その効果は看板を立てる場所にもよるでしょう。

一概には言えませんが、野立て看板の相場は100万~150万円位で3年分割払い、駅看板は1年間で50~150万円位の金額をよく目にします。看板作成料を含むのか含まないのかは、契約時に明確にしておいてください。

上記広告のうち近隣の医療MAP、電話帳、看板については、不特定多数の人が広告を目にするため医療法の広告規制を受ける事になります。

つまり他院と比べてあまり奇抜なことは記載できませんので注意が必要です。

ちなみにHPは特定の人(HPを見ようと思った人)が見ますので、医院の広告内容は自由です。

医院を新築する場合は経験上、上棟式と併せて餅まきをすると結構人が集まります。
ある医院さんでは「○月○日 17時から餅まきをします」という手書きポスターを貼っただけなのですが、200名近くの人が集まりました。
自然な形で近隣住民と触れ合う事ができますからいいかもしれませんね。
「餅まきなんて何十年振りだろうか?」などと、ご近隣のお爺ちゃんやお婆ちゃんがワクワクしているのを見た事があります。
ただし集まるのは、ほとんどがご老人ですから、怪我をさせないよう細心の注意が必要です。
ちなみにその医院さんの餅まきでは負傷者が一人出てしまいました(餅を追いかけたご老人が転倒して頭から流血)。
開業準備中、一般的に近隣の住民は「ここには何ができるのだろうか?」と興味を持 っています。
そこで開業前の段階で「○○医院 ×月×日 開院予定」というポスター(又は看板)を貼っておきます。
可能であればポスター作成前にHPを先に開設しておき、HPのURLを記入しておくのも手だと思います。
「どの順番で診療科目を標榜しようか?」
 どの院長も開業にあたって悩むところだと思います。
大変無礼である事を承知の上で述べさせていただくと、例えば胃腸科等を専門に診療なさっている院長方は、例えば「○○胃腸科・内科クリニック」という胃腸科を前面に出すより、「○○内科・胃腸科クリニック」と、まずは「内科」をアピールした方が、患者さんが来院しやすいように思います(循環器、精神科他も同様)。

「胃腸科・内科」だと胃腸の調子が悪くなければ患者さんは来ませんが、「内科・胃腸科」だと風邪で微熱がある程度でも、「内科だから診てもらおうかな」、「風邪の季節だからインフルエンザの予防接種してもらおうかな?」と疾患の間口が拡がるように思います。

一度決めたクリニック名を変更する場合、看板、各種広告物、診察券、名刺の作り替えや、保健所届出のやり直しなど、大変なコストと労力を必要とします。
クリニック名は将来変更する事のないように、くれぐれも慎重につけてください。

内覧会の開催

税理士_医院開業_内覧会
過去に開業された医院を見ていますと、内覧会の動員人数と開業後の来院患者数は深い関係があるように思います。
つまり内覧会が盛況であった場合は、開業後の患者さんの数も多いという訳です。
従って、「内覧会に何人動員できるか」に照準を当てて準備してはいかがでしょう?
近隣の住民、友人知人、親族、医療関連業者

 【アドバイス】
最も重要なことは近隣の住民をいかにたくさん呼ぶかですが、院長の知人の方々に「○○医院の院長はいいよ」と口利きしてもらうことも重要です。業者さんだからといって軽く見ずに、普段から誠心誠意の対応を心掛けた方が得策です。
イ 近隣の住民・・・チラシやポスターの配布、新聞等の広告
ロ 教授、先輩、友人知人、親族・・・内覧会の案内葉書(開業挨拶状を兼ねる)

 【アドバイス】
上記イ(近隣住民)と上記ロ(教授など)は時間帯が重ならないようにしてください。
教授が内覧会に来たため、院長がつきっきりで応対し、近隣住民をないがしろにしてひんしゅくを買ってしまうケースがよくあります。
例えば 近隣住民 10時~15時、教授他 16時~18時 などのように、時間帯をずらしたほうがよいと思います。
開業前名刺、チラシ、ポスター、内覧会の案内状、内覧会のお礼状
開業用名刺の作成

 【アドバイス】
今までの経験上、ほとんどのドクターは自院の名刺を持たずに開業準備をされているように思います。
自分の名刺が無ければ名刺交換はできませんよね。まずは開業準備中であることを記入した名刺を作ってみてください。
【アドバイス】
開業準備開始時から内覧会の動員人数を増やすため、これから出会う人全てに対して積極的に名刺交換を行い、名刺を集めていきます。
もちろん内覧会の案内状を送るためです。集める名刺の目標は300人です。根拠はありませんが(笑)
できるだけたくさんという意味です。
【アドバイス】
上記チラシやポスター、案内状、開業用名刺を院長院長自らが作成されるケースがありますが、専門の業者さんに依頼すれば、全て込みで大体15万円程度で作ってもらえます(作成期間は3日~2週間程度)。
このような広告物は人に渡さない限り効果がありませんので、自分で作る事に精を出すよりも作成はプロに任せて、配布することに力を入れてみてはいかがでしょう?
【アドバイス】
一般的なノベルティは歯科医院であれば歯ブラシやフロス、小児を対象とする診療科であれば風船などが代表的でしょうか。
レクリエーションについては、たこ焼き、寿司、蕎麦、ケーキなどの食事を提供する場合もあります。レクリエーションの目的は、「医院に人がたくさんいる環境を作るため」です。
人が人を呼びますからね。今までの経験では玄関の入り口付近でのスーパーボールすくいが一番盛り上がっていました。
子供達が結構寄ってきます。
【アドバイス】
ある医院で開業後の患者アンケートを集計した結果、その医院では患者さんの約2割がポスティングで来ている事が分かりました。
地域差はあると思いますがポスティングもバカにできませんね。
また、近隣のマンションにポスティングをする他、スタッフさん全員と手分けして近隣の商店や老人会長、町内会長に菓子折りとポスターを持っていき「近くで医院を開業しますのでお付き合いよろしくお願いします」と挨拶をしたほうがいいように思います。
あるドクターが町内会長を恐る恐る尋ねていったところ、「院長がわざわざ来てくださるなんて!ありがとうございます!」と逆にお礼を言われたそうです。
その院長曰く、これは特別な事ではなく挨拶に行くと、ほとんどの方がそのような反応を示してくれるそうです。

「案ずるより産むが易し」ですね。
「あの時やっとけばよかった!」なんて開業後に後悔する事のないようにしてくださいね。
ちなみに「町内会長や老人会長はどうやって調べるんですか?」との質問をよく頂きますが、地域の古い商店のご主人に尋ねると、ほとんどの人が教えてくれます。
【アドバイス】
医院のHPを作成する場合は、内覧会の案内状にHPのURLを入れておきます。
私見ですが、案内状にHPのURLが記載されていると、半分近くの人がHPを見ているように思います。つまり300通発送すれば50%の150人が医院のHPを見に来る事になります。
この事により、検索エンジンにHPがヒットしやすくなります。このためにも内覧会の案内状を何通送れるかが大事なのです。

ちなみに開業後にHPを作成し、特に検索エンジン最適化(SEO)などの対策を取らない場合、「○○市 ○○医院」で自院がヒットするまでに1ヶ月以上かかります。
これまでスーツを着た業者さんが仕切っているスマートな内覧会を何度も見ました。
(ちなみに私も以前プロデュースしたことがありますが・・・)

私見ですが、内覧会を業者さんが仕切っていると、どうしても院長が頼りなく見えてしまいます。
見学に来る人の興味は、「どんな院長なんだろうか?どんな看護師さんや歯科衛生士さんなんだろうか?」に尽きます。
スマートでなくてもいいので、院長やスタッフさんの人柄が伝わるような手作り感いっぱいの内覧会を開催してはどうでしょう?
内覧会の段取り
玄関外・・・呼び込み係を1人
受付・・・一人
それ以外は診察室の入り口付近に待機

<流れ>
玄関外で呼び込み係が「内覧会やってます!」とチラシを配布

【アドバイス】
医院に人が集まり易いように玄関横でスーパーボールすくいなどを開催するのも一つ
受付で「よろしかったらご記入ください」と言って名簿に記入を促す。

【アドバイス】
後でお礼状を出すための名簿になります。
その後は見学者一組に対し、担当者を一人つけて院内を案内する。

【アドバイス】
「何を話せばいいんですか?」という質問を受ける事がありますが、
待合室・・・なぜこのような配置にしたのか?なぜ土足(又はスリッパ)なのか?どのような雑誌を置くのか?なぜ壁紙をこの色にしたのか?を考えてみてください。話す事はたくさんありますよね。
診察室等・・・なぜこの医療機器を買ったのか?なぜこの電子カルテにしたのか?なぜこのような間取りにしたのか?を考えてみてください。
一通り案内したら、「予約も受け付けております」とさりげなくアピール。

【アドバイス】
予約が入ると嬉しい半面、開業初日は院長もスタッフさんも馴れていないので、院内が混乱する事もあるようです。患者さんが多すぎるのも問題のようですね。
最後にノベルティを渡して帰っていただく。
内覧会の見学お礼状の発送準備をします。

【アドバイス】

開業祝いの花を送って下さった方には、花の写真を同封すると喜ばれます。
現在~
名刺交換を積極的に行い、名簿作りを行う
2か月前
HPや内覧会チラシ等を作成
1か月前
ノベルティやレクリエーション機材の発注
新聞広告等の発注
2週間前
案内状の発送
1週間前
ポスティングや近隣のあいさつ回り
前日
内覧会のシミュレーション
当日
内覧会
翌日以降
お花の写真撮影、お礼状の発送

最後に

医院_開業
以上様々な私見を述べてまいりましたが、上記の患者さん獲得ノウハウの全てに共通する事は、「院長が患者さん獲得のために積極的に動く」ということです。
つまり全ての項目について院長の行動力が試されているのです。
院長が院長室から外に出ていかないと患者さんは来てくれません。患者さんにとって初めて入る医院の敷居は、院長が思っているよりも高いのです。
病気の方を診察室でお待ちするのではなく、院長自らが病気の方を探しに外に出て行って下さい。
開業準備を始めた当初は「実は人と会うのが苦手なんですよね」などと言っている院長も、いよいよ開業が近づいてくるといろんな事を実行されます。
過去に開業されたいろんな院長方が、勇気を振り絞ってとった行動とその結果をまとめたものがこのコラムです。決して全部を実行して下さいということではありません。

これらをタタキ台にして、自分らしいクリニック開業、自分らしい患者さん獲得活動を行っていただければ幸いです。
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